9月2日
2007-09-03


 色んなところで評判の良かった「『世界征服』は可能か?」(岡田斗司夫著、ちくまプリマー新書)を買って読みました。実は以前に立ち読み済みだったりするんだけど(苦笑)、激しくツッコむからには買わないと。作者の傾向?に敬意を表して、あえて色はコレです。
 内容は、漫画やアニメ・特撮などに出てくる「世界征服」を分析しつつ、「世界征服に必要なモノは」「征服した後どうなるか」ってなものを論じている。馬鹿馬鹿しいと言えば馬鹿馬鹿しいけど、内容はそれなりに真面目。世界征服なんて馬鹿馬鹿しい…と思っている人にこそ読んでもらいたいね。
 世界征服なんて、労多くして実入りが少ない。こんなことはわかりやすいことだけど、どう「労多くして」、どう「実入り少ない」のかを真正面から考える奴は滅多にいない。せいぜい「労多くして」の部分(一番わかりやすい)だけ浅く考えて「無理だ」って結論を下し、その後は深く考えない…ってレベルじゃなかろーか。
 実を言えば、この考えは危険でもある。「ある日気がついたら、世界は征服されていた」って事態を迎えかねないのだ。世界征服は大変だ。少なくとも簡単にできるモノじゃない。そこはいい。しかし、誰かがその条件をクリアしちゃったら?一般的に言って、征服されてから文句を言っても遅い。その前に征服を阻止する方が手っ取り早いはずだ。そう考えると、世界征服について考えるのは決して無駄ってワケでもない。ま、おそらく役に立たないことは認めるけど。
 著者はヲタク世界じゃかなりの有名人であり、世界征服についての分析はかなりのものである。ま、しょせんベースが漫画・アニメ・特撮レベルではあるけど。ただ、現実に「世界征服」なんて言い出してる奴はほとんどいない以上、この辺から入るのは間違ってはいないと思う。特に「バビル二世」の敵役ヨミに関する分析は秀逸だと思うな。
 ちなみにこのヨミ様、漫画の上では「敵役」であり「悪」であるけど、ホントの意味で悪なのかと言われるとビミョーである。彼が悪なら、織田信長やカエサル(シーザー)だって立派な悪になる。伝統的に「敵役」だけど、単純な「悪」ではないって意味では「三国志演義」の曹操と同じような…ううむ、さすが横山光輝。「横山三国志」が面白いのも道理だ(笑)。
 閑話休題。この本は良くできているけど、一応「大事なヌケ」が存在する。ま、こういうテーマを論じる人間が少ない以上、どうしたってそういうものが出てくるのは仕方ないんだけど。私の目から見ると、世界征服の動機として「ヒマ潰し」を挙げてないのは気になるし、世界を征服した後やるべきことに「部下の粛正」が入ってないのは問題かなと。
 世界征服が「ヒマ潰し」ってのはどうなのよ…と思うかも知れないけど、実は結構現実的な動機である。いわゆる「愉快犯」の一種だね。実際にはここまでスケールの大きいバカはいない…と言いたいところだけど、インターネットの根幹部分や国家機密に対してアタックをかけてるハッカーは、ある種「ヒマ潰しとしての世界征服(ただしネットだけ)」に乗り出してると言えるかも。
 こういう連中は、ある意味では始末に負えない。世界征服ってのは「征服した後にどんな世界を打ち立てるのか」が重要だったりするけれど、そんなビジョンはあまり考えてない。ただ単に世界を混乱させ、うろたえる様を観てればそれでOKだから。厳密な意味では世界征服をたくらんでるとは言い難い(征服後のビジョンなき征服行動は賛同者が得られにくいので、どうしてもスケールが小さくなる)けど、迷惑度は似たり寄ったり。

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[紫(ヲタクな話題)]

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