10月20日
2012-10-27


 本日は、とある約束により「ゲームの勝利条件」について語る。ゲームルールの仕組み解説講座なので、専門性は極めて高いです。その点はご了承下さい。
 専門家向けなので、細かい説明は省こう。勝利条件というモノは、私に言わせると「はなはだしく誤解されている」と思う。基本的には「ゲーム終了時に、ドチラが勝ったのかを判定する基準」とだけ認識されているようだけど、実はもう1つ、より重要な意味があるというのが、私の見解だ。それは、「ゲームの進行を、デザイナーの想定した方向へ導くための動機」という役割だ。
 よ〜く考えて欲しい。いわゆる東部戦線キャンペーンにおいて、独軍担当プレイヤーは何故攻撃に出るのか?確かに、攻撃しなきゃモスクワは獲れない。でも、大抵の場合攻撃したって獲れない。他の都市は占領できても、それだとゲームは「ドイツの勝ちです。おめでとう!」で終了したりしない。そうすると、最後はベルリンを巡る攻防に持ち込まれる。だったら何故攻勢に出る?最初から守ればいいではないか。
 このような「かみ合わないプレイ」にならないよう、普通は勝利条件って目標が与えられ、お互いがソレを達成する方向でゲームを進めることにより、「マトモな」プレイになる。これは勝利至上主義うんぬんとは関係がない。そりゃあね、「ぼくのだいじなそうこうぶたいがしぬのはいやだぁ」ってな思惑から、バルジの戦いを扱ったゲームなのに独軍が攻勢に出ない…なんてプレイをするのも自由だ。けど、対戦相手はソレで楽しめるのか?「勝ちにこだわる」と「勝利条件を追求する」は似ているようでいて、全くの別物だ。前者の否定は「負けという判定だと認めるけれど、気にしない」であるべきで、「勝利条件なんて気にしなくて良い」であってはならない。ソレを認めると、マトモなプレイが成立するかどうか、怪しくなる。
 この世には、自分勝手な勝利条件を追求して良いゲームがあることは事実。テーブルトークRPGがそうだよね。ただ、アレはマスターという「権限の大きい裁定者」がいるから、話にまとまりが出るのだ。ウォーゲームにそんな立場の人間はいない。それに代わるのが「ルールで定められた勝利条件」だ。つまり、勝利条件とは「適切な、面白いプレイにするためには、どんな方向でプレイすれば良いのか、定義する」役割もある。このことは、当たり前すぎて軽視されていると思う。
 そもそもだ。時々問題になる「勝利にこだわった結果生じる、論外なプレイ」が発生する原因は、「勝利条件がプレイヤーの目標設定に失敗してる」ことが第一要因であることが多い。まずゲームでやらせたいことと勝利条件の間に食い違いが生じていて、ソコを「勝利至上主義」の人間が利用した結果そうなる…というわけだ。逆に言えば、勝利条件が適切な目標設定に成功していれば、勝利至上主義者と言えども「マトモなプレイ」をする。それが勝つための手段であり方向性なんだから。勝利至上主義的な態度を擁護するつもりはないけれど、問題点をプレイヤーの態度にだけ求めるのはむしろ不毛だと思う。

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[赤(ボードゲームの話題)]

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